制約のある人の採用について考える
磯村 裕子氏 サン樹脂(株)
白井 美佐子氏 (株)明治ライアス

昨年12月9日に共育、共同求人、協働共生の3委員会が合同で開催されました。報告者に磯村裕子氏と白井美佐子氏、コーディネーターに篠田寛子氏を迎え、「制約のある人の採用について」と題して行われたパネル討論の概要を紹介します。
自社について
【白井】明治ライアスは牛乳・乳製品の卸売業を主としています。今回お話しする「制約のある人」は高齢者です。当社の定年は60歳ですが、働き続けたいという希望があれば、健康診断の結果を確認しながら雇用を継続しています。給与や条件は原則変えず、体力や家庭事情に応じて勤務日数を調整しています。
【磯村】サン樹脂は北名古屋市にてプラスチック部品の加工をしています。社員数は正社員とパートタイマーを合わせて69名です。本日お話しする「制約のある人」は、子育て世代で短時間勤務をしている人です。正社員の平均年齢は、会社全体では34歳ですが、部門別では28歳と38歳となり、部署によって10歳の年齢差があるアンバランスな状態です。
対象者を雇用した背景
【白井】1995年の就職氷河期がきっかけです。当時、高齢者が再就職先を見つけるのは、新卒の学生たち以上に困難でした。人手不足や定年延長の必要に迫られての雇用ではなく、当時の私は新卒採用もする一方で、さまざまな年齢層の人がいる方が会社として1回りも2回りも成長できるのではないか、と考えていました。
【磯村】2009年から新卒採用を始め、目標としていた製造現場で働く女性も増えたのですが、やがてほぼ同時期に彼女たちの産休が重なる状況が生まれました。その時に、復帰も見据えながらパートを雇用することにしました。正社員がしていた仕事を切り出して割り振っており、もしパートが全員いなくても正社員が対応できる体制になっています。
雇用して見えてきた課題と対応策
【白井】同じ年齢でも、健康状態や働き方への意識は違うということです。大企業の役職経験者でも、前職の立場を引きずり上から目線になる人と、そうでない人がいました。その差は身についた企業風土だと実感し、改めて、企業風土や社員教育など、きちんと考えていかなければいけないと思いました。
【磯村】時短勤務の男性に代わりの利かない仕事が多く、彼が最後までやり切らざるを得ない状況があります。現場は若手が多く技術的に追いついていないため、そこの底上げが喫緊の課題です。また、時短勤務による賃金減少も不満につながるため、早い段階で全員の給料のベースアップを考えなければなりません。
自身、社員、会社の変化
【白井】健康面が理由で急に働けなくなることも想定し、入社時から「1人2役以上」を前提にしています。さまざまなニーズに対応できる会社であれば、障害のある人に対する偏見もなくなります。各世代にさまざまな問題を抱える人がいて、何か起きるたびに皆で話し合いをしてきました。そういう時にリーダーシップを発揮できる人が重要だと考えます。管理者の評価基準は業績よりも、人の変化に気づけるか、周囲を見られているかを重視しています。すぐに風通しのよい職場になったわけではなく、30年かけて変わってきました。
【磯村】産休復帰者が辞めてしまわないように、育児の悩みを交流する「ママミーティング」を月に一度行っています。これは当初、正社員のみ対象としていましたが、社員の声を受け、正社員とパートの区別なく行うようにしたことで、同じ子育て世代としての連帯感が生まれました。お互いを知り合うことは、その後の仕事にもよい影響があるのだと感じました。
どんな人でも働ける会社を目指して
【白井】何かを天秤にかけて会社で働くことを諦める人をなくしたいと感じました。働き方に関しては、正社員も含め、週の出勤日数は本人に決めてもらっています。家庭や本人の健康状態に合わせ、1人1人に対応できるような体制を整えてきました。また、人同士の相性も見ています。仕事に人をつけるのではなく、人に合わせて仕事をつくる発想です。時代とともに仕事内容は変わり、社員に合わせて仕事のやり方も変えていくべきだと思います。
【磯村】時差出勤や時間有休など、時間制限のある社員には融通が利くような制度を取り入れています。前日までに申告があれば対応はできますが、当日に関しては、どんな理由でも欠勤扱いとします。会社の秩序に関わる問題なので、そこは譲れません。ただ、さまざまな事情を抱えて会社に来ていることを理解し、もっと気を配る必要があるかもしれないと考え直しました。事情が分かって初めて向いている仕事を判断でき、辞めなくてもよい職場に変えていけるのだと思います。
まとめ
【白井】家庭環境の中で何かしらのハンディを抱えた人を受け入れることは、難点になるというイメージを持たれるかもしれませんが、試しに1人でも雇用してみると、既存の社員たちの人間性が試され、必ず人間的な成長を感じることができます。人間性の向上と仕事の技術と両方の柱が育っていくことが、会社の価値や周りからの評価につながっていくと信じています。
【磯村】「隣の人の仕事ができる状態」、「多能工化ができるかどうか」、ここが重要だと思います。私は、多能工を便利に使うのではなく、会社の中で価値ある存在だと定義していきたいです。ここがきちんと伝わっていないと、「頼まれごとが増えて困る」という社員も出てきてます。「お互いさま」として対応できるよう多能工の価値を上げていくことが、よい社風を築いていく大きな一歩だと考えます。









