調査・研究・提言

「選挙に行こう」キャンペーン(9)
各政党への愛知同友会からの質問状に対する回答(2003年11月総選挙)

各政党に対する愛知中小企業家同友会からの質問状に対する回答
(金融アセスメント法、中小企業憲章)(到着順)

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今年1月より愛知同友会では、中小企業家が政治に関心を持ち、自分達に夢のある日本を作るために、政党・特定の政治家を応援するのではなく、社員家族を巻き込んだ社会運動として、政治を考えようと「選挙に行こう」キャンペーンを展開しています。この秋予想される解散・総選挙に向け、佐々木正喜会長名で、金融問題と中同協で進めている「中小企業憲章」制定の取り組みについて各政党の政策を尋ねました(9月12~22日)。なお、質問については各300字以内で回答をお願いしました。

◎自由党、保守新党からは残念ながら回答がございませんでした。

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質問(1)-回答は到着順-
中小企業家同友会全国協議会(全国会員数・3万7千社)では、数年前より「金融アセスメント法」(地域と中小企業の金融環境を活性化させる法律案)の制定をめざして、現在、全国署名101万、657議会(22の道府県議会含む)で意見書が採択されるまでになりました。このことを受け、金融行政において「リレーションシップバンキング」(人間的関係重視の銀行業務運営)構想等も出されるようになりました。これらを踏まえ、貴党の中小企業むけの金融政策をお聞かせください。

●自由民主党(愛知県支部連合会)

円滑な資金受給、利用者利便、経営の健全化は、いずれも金融活動において主要な事柄であり、各金融機関が自らの経営判断に基づいて、それぞれの特性を発揮しつつ切磋琢磨する中で、中小企業をはじめとする地域の資金需要に適切に応えていくことが重要と考えます。円滑な資金提供対策として、融資限度額の引上げや融資限度額引上げ措置の延長、また、貸し渋り、貸しはがし対策として、金融の円滑化や融資対象の拡大、さらには、産業空洞化対策として、企業立地促進資金の限度額の引上げなど、中小金融セーフティネットを始めとする中小金融対策の拡充に努めてまいります。

●日本共産党(愛知県委員会)

中小企業に安定的な資金供給を行うためには、小泉内閣による収益至上主義の金融行政を抜本的に転換するとともに、(1)地域住民や事業者等による「地域金融活性化委員会」を設置して、金融機関の地域経済への貢献度等を評価・公表し、金融庁と県等を通じて金融機関に必要な改善を求める体制をつくる、(2)信金・信組の監督・検査権限を金融庁から県等に移し、地域の実情をふまえた監督・検査・指導体制を確立すること等が必要です。日本共産党は「地域金融活性化法案」を国会に提出するとともに、地方レベルでも「金融アセスメント法」や「貸し渋り・貸しはがし防止条例」等の制定を求める全国各地の運動と連携して、その実現に取り組んでいます。

●社民党(愛知県連合)

ご質問にある「金融アセスメント法」制定構想には全面的に賛成致します。先に行われたりそな銀行への1兆9,600億円の公的資金投入は、内外に大きな衝撃を与えた施策であったが、その陰で、金融庁の報告によれば、たとえば中部銀行・石川銀行など地方の金融機関の破綻処理が進められている。しかも、公的資金をこれまでに投入された大手銀行5グループをはじめ地銀、第2地銀10行などに対して、「収益力の増強」を柱とする改善命令が出されるなど、今後、小泉総理の再選を機にますます小泉構造改革路線に基づいた金融政策が強行されることが予想される。しかし、この「金融政策」路線は、地方を支え、日本の産業を支えている中小零細企業への新たな「貸渋り・貸し剥がし」のおそれをもたらす可能性が大きい。なぜなら、金融政策の根幹は、実体経済を支える企業とりわけ中小零細企業を中長期的な視野に基づき育て、支える施策の展開を意図するのでなく、何よりも銀行等の金融機関の救済を優先するものだからである。今後これまでに増して、中小企業への新たな「貸渋り・貸し剥がし」が生じてはならない。むしろ地方自治体で取り組まれている既存の「債務保証制度」をさらに充実させ、真に中小零細企業が必要とする企業経営のための設備投資、人材育成、信用保証などを実効あるものにしなければならないと考える。

●公明党(愛知県本部)

金融機関には一定の公共性が求められ、また、地域経済にも一定の役割が果たすことが求められると考え、公明党は「金融アセスメント法」と基本的方向性で同様の考え方に立ち、「地域金融活性化法案」の制定を主張してきた。本年3月、金融庁はリレーションシップ・バンキングの機能強化に関するアクションプログラムを策定したが、これはアセスメント法の趣旨を踏まえたもので、一歩前進と考えている。リレーションシップ・バンキングの機能強化策を強力に推進するとともに、無担保・無保証融資の拡充、個人保証に頼らない融資制度の創設など多様な資金調達手段を確保していきたい。

●民主党(愛知県総支部連合会)

景気は、若干上向き傾向にあるとはいえ、長期にわたる低迷とデフレ傾向は、払拭されていません。金融システムは、政府の認識とは大きく食い違い、不良債権処理にしても中小企業への貸し渋り、貸しはがしの事態は、解消されていません。未だ中小企業は、大変厳しい環境にあります。民主党は、現在策定中の政権公約(マニフェスト)において、これまでに引き続き、「地域金融円滑化法(金融アセスメント法)」の制定はもちろん、「金融ファイナルプランの実行」、「金融サービス法の制定」、「証券取引委員会(日本版SEC)の設置」など、貸し出しを業とする金融機関が、本来の機能を取り戻すための金融システムの早期健全化と経済再生、政府系金融機関の個人保証の撤廃、貸し渋り、貸しはがしに対する緊急避難策としての「特別信用保証制度」の復活など、中小企業育成のための金融システムに万全を期す政策の実現をはかります。なお、ヤミ金融の横行と被害の増大を一刻も早く食い止めるため、すでに『ヤミ金融対策法案』をとりまとめ、与野党共同で実現させています。

質問(2)-回答は到着順-
日本の産業空洞化が進む中、地域経済・国民経済を支えるのは中小企業しかない状況になっています。大企業は軸足を海外に移しつつあり、国民経済を支える中小企業の役割がますます高まっています。このような中、私達同友会は地域経済・国民経済を支えるのは中小企業と宣言し、行動プログラムを示す必要があると考えており、「中小企業憲章」制定に取り組み始めました(「中小企業憲章」に関しては同封の永山利和・日大教授の文書をご参考ください)。そのことに関しての貴党の見解をお聞かせください。

●自由民主党(愛知県支部連合会)

中小企業は、新たな雇用と産業を創出するとともに、地域における経済の活性化を促進するなど、わが国経済の基盤となる重要な使命と役割を担っております。しかしながら、中小企業を取り巻く現下の環境・情勢は大変厳しく、ITへの対応や、創業・経営革新の促進、税制の見直し、金融支援策など、迅速効果的な中小企業対策を講じ、政権与党として責任を持って中小企業の振興を支援していくことが、最優先の課題と考えております。このため、国・県においては、中小企業対策予算について、引き続き、重点的・効率的予算措置を講じ、中小企業対策の拡充強化に万全を期してまいります。

●日本共産党(愛知県委員会)

中小企業は産業の各分野で大きな比重を占め、雇用でも全従業員の8割を占めるなど、日本の経済・社会を支える土台の役割を果たしており、それにふさわしい対策が必要です。日本共産党は、中小企業の保護・育成について国の責任を明確にするとともに、中小企業予算を抜本的に増額し、予算の内容も、これまでの出資金や利子補給金などの融資偏重から、中小企業の経営基盤を直接支えるものに改革すべきであると提言しています。世界では近年、中小企業の役割を改めて見直し、対策強化の流れが本流となっていますが、中小企業を軽視し続けてきた政府の姿勢を抜本的に転換させるうえでも、「中小企業憲章」の制定は大きな意義をもっていると考えます。

●社民党(愛知県連合)

この憲章制定の意義はたいへん重要であり、全面的に賛成致します。地域における産業活性化施策としての金融政策がとられなければならない。なぜなら、この間、産業の空洞化が進み、大規模なリストラ、工場の統廃合、外国への移転等が相次ぎ、日本全体の地域が沈没しつつあるからである。地域の活性化があってこそ、日本の再生が可能であり、そのためには、ご質問にあるEU等の「中小企業憲章」の内容を日本でも早急に制定することがたいへん重要な意義を有していると考える。そして、この「憲章」に基づき、地域に密着して、地域の活性化に貢献してきた中小零細企業の歴史をふまえつつ、地域における雇用創出のための施策に直結して再生する「中小零細企業の活性化」を実現するために、大企業が一方的に実施する企業の統廃合・移転を強行たとえば中国・東南アジア等への移転をすることによって、地域を衰退に追い込む事態を一刻も早く中止させ、改めて技術力を根付かせる地域・地方の再生を実現し、その結果としての日本再生を達成しなければならない。

●公明党(愛知県本部)

中小企業が「日本経済の屋台骨」であり、中小企業の活性化なくして、経済に活力は生まれないと考えており、経済政策を策定する上で、中小企業振興を中心に据えるべきとの考え方は全く同じである。こうした観点から、セーフティネット保証・融資、売掛債権担保融資保証、資金繰り円滑化借換保証などの融資制度の拡充、税制面での優遇措置の拡充などに尽力してきたところである。中小企業憲章については、趣旨は概ね理解できるもので、中小企業の今後を考えた上で、非常に重要なご提案であると認識している。永山利和理論の長期不況の性格と見通し、指摘を的確にとらえ、現状を打開するとともに、欧州小企業憲章の「原則」と「行動指針」に学び、日本経済の実情に即した憲章制定が待たれる。

●民主党(愛知県総支部連合会)

民主党は、政権公約(マニフェスト)で、中小企業・ベンチャー支援策として、中小企業金融の早期健全化、税制に関しては、外形標準課税について、雇用・および中小企業への影響を鑑み、慎重な検討をおこなうことをはじめ、中小ベンチャー法人の法人税減免などをすすめるとともに、日本版SBIR制度・STTR制度の導入やエンジェル支援策などを提起しています。また、日本経済の根本を支えているのは、まさに中小企業であり、その重要さは、欧米以上ともいえます。中小企業の健全育成をなくしては活性化も雇用もありえないことから、まさに日本経済の再生の鍵であるといえます。そこで、民主党は、中小企業担当大臣の任命をおこないます。こうした立場から、貴団体の提起するEU型の「中小企業憲章」制定については、今後充分検討していきたいと考えます。