活動報告

愛知同友会60年の歩み(第4回)「道なきみち」を歩んで

80年代、新生同友会への脱皮

円高不況からバブル経済へ

1970年代の2度の石油危機を乗り越えて、80年代は、国際的にはNIEs諸国やASEAN諸国の追い上げや、アメリカ等との貿易摩擦、さらには為替相場の変動が企業経営に大きな影響を与えるようになりました。

国内的には製造業における高加工度化、経済のサービス化、情報化、消費者ニーズの多様化・高級化により少品種大量生産から、多品種少量生産化などが進展します。

一方で、エネルギー価格の高騰、公害問題の顕在化による企業のコスト負担の増加など、企業経営に影響を与える要因が生じていました。

80年代後半は、85年9月のG5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議、日米英仏独が参加)によるプラザ合意後、急速な円高と同時に、円高不況が発生しました。

円高不況は短期間に終息し、80年代後半はバブル経済の時代を迎え、グローバライゼーションは80年以降急速に進行しました。

日本は世界の先進資本国の中でアメリカに次いでGDP第2位の国を維持し、日本の産業の国際競争力の強さも世界の注目を浴びていた時代でした。

創立20周年のつどい(1982年7月17日)

地域社会の視点も創立20周年を迎え

82年7月17日、愛知同友会創立20周年の集いが開催され、創立以降の20年間を振り返って、記念誌『躍進~道なきみちを(同友会の20年)』が出版されます。

その中で77年に作成された「中期ビジョン」を継承した新たなビジョン、「激動する経済環境に対応できる経営体質の強化を~第3期中期ビジョン」が発表されます。この中期ビジョンでは「今こそ経営理念・指針にもとづく企業活動を」と、経営指針の重要性が協調されています。

一方、80年代は地方の時代と言われましたが、同じビジョンの中で、「愛知県下の中小企業の実情」「地域経済安定に寄与する中小企業へ」「会員企業と地域社会に役立つ同友会へ」という地域経済と中小企業、同友会という視点も打ち出されています。

20周年記念躍進セミナー(1982年9月2日)「小さな会社は『やる気』がすごい」と題して著者の鎌田氏が講演

20周年記念出版がベストセラーに

また、創立20周年を記念して出版されたのが、愛知同友会の会員企業24社の事例を紹介した書籍「小さな会社は『やる気』がすごい」(鎌田勝著、中経出版)で、1万4000冊読まれ、ビジネス書部門でベストセラーにもなりました。

今でこそ、現場主義と称して、企業の事例紹介をする本は珍しくありませんが、企業のケーススタディによって書かれた本は、当時あまりありませんでした。同書は、現場主義のさきがけと言えます。

その構成は、(1)人材の小集団、(2)頭脳と汗、(3)全社員のパワー、(4)経済常識を超えて、(5)商圏の創造、(6)明日への小組織となっており、この書籍を通じて愛知同友会のことを知り、入会された経営者の方もみえました。

1万4千冊読まれた20周年記念出版「小さな会社は『やる気』がすごい」

広域交流をめざし、ブロック(支部)導入

本連載第1回で、愛知同友会の60年間の活動は「先駆性と時代適応性に総括される」と述べました。

このうちの時代適応性に関しては、創立2年目から始まった地区組織の細分化や支部編成と再編、会勢の増加に伴う組織の増大とスリム化をめざした90年代後半の活動改善の取り組みなどを挙げました。

80年代、会員数の増大とともに支部・地区の細分化は継続して行われましたが、組織のエポックをなしたのが、83年4月から導入された「ブロック(支部)」制度で、4ブロック(名古屋1~4)・1支部(三河)体制がスタートします(地区数は40)。

導入にあたっては、「地区を超えた幅広い交流のできる活動の場をつくる」を目的とし、講演会、研究会、レクレーションなど、それまで会全体で行ってきた会員交流等のイベントを「代行」するものでした。

それから30年。ブロックは支部に名称を統一し、4ブロック・1支部から10支部に、会員数も1000名から4000名へと発展してきました。支部の位置づけも、「地区の地域連合として、『地域社会を基礎にして、知り合い・学びあい・励ましあいの同友会活動を進める地区』を支援する役割」であると謳われています。

現在の愛知同友会の組織方針である支部・地区という形態は、80年代に確立したと言えます。

第1ブロック発足例会(1983年4月)

2000名会員を突破(1991年7月)

80年代後半はバブル経済による好景気が続き、会員も増加し、愛知同友会の運動は一見、順風満帆であるかのように見えました。会勢も、80年の1000名超から91年7月には2000名を突破し、30周年を迎える92年の期首を2016名でスタートします。

80年代は愛知同友会にとって70年代からの運動を継続し、他方では90年代の運動につながる課題を模索する時代であったと言えます。

2000名会員達成を報じる「同友Aichi」174号(1991年8月)

専務理事  内輪 博之