活動報告

2023年度 インターンシップ(キックオフ 8月21日/修了式 9月1日)

働くことについて考える
~就業体験から中小企業を知る

2023年度 インターンシップ

4年ぶりの集合型研修

愛知同友会では1998年より大学生のインターンシップに取り組んでおり、2週間の就業体験を通して「働くことの意義」や「中小企業の魅力、仕事」を伝えています。今年度のインターンシップではキックオフセミナーや修了式を4年ぶりに対面にて実施。会員企業30社と同友会事務局で、60名の学生が2週間の研修に臨みました。

学生・企業・学校が働くことについて考える

8月21日のキックオフセミナーには、学生・企業・学校の総勢115名が参加しました。

まず同友会インターンシップを経験した学生実行委員より2名が報告。「メモを取り、自分で振り返りながら、自身の成長を感じることができた」「企業理念はその場所で働く人の生き方に通ずるものがあるので、それを実感してほしい」と語りました。

トヨコン社長の明石耕作氏からは、「社員や経営者と積極的に話し、その企業の社風を肌で感じてほしい」「最後までやり抜く意識を持ち、どうすればできるかを考える場にしてほしい」と、研修に臨む心構えについて報告いただきました。

その後、グループ討論にて研修の目標を設定し、各社での研修が始まりました。

集合型研修で3者(学生・企業・学校)が目標を設定し、共有する(9月1日修了式)

9月1日の修了式では、まずコンタクトと伊藤精密工具製作所より、それぞれ経営者と学生が報告。学生は「中小企業で働くことのイメージができた」「自分の働く目的を見つけることができた」と語り、経営者からは「なぜこの仕事を始めたのか、学生に語ることで思い返すことができた」「社員も自分の仕事の意味を考える機会となった」との声が寄せられました。

修了式後には、企業と学校で「まとめ会議」を開催し、同友会の考える企業と学校の連携構想に関して有意義な意見交換を行いました。

体験と対話から学ぶインターンシップ(インターンシップ研修生 作成記事)

学生が思う、人を生かす経営を具体化する企業の魅力とは

工夫された器具でテキパキと仕事をこなす様子を見学

2023年度インターンシップにおいて、愛知同友会事務局では学生3名を2週間受け入れました。3名が企業訪問後に共同執筆した「人を生かす経営を具体化する企業の魅力」の記事を、以下に掲載します。

相手の話を聞き、自分の意見を伝え、意欲的に学び吸収しようとする姿勢やその率直な意見から、局員も学びました。この2週間の経験が、未来につながっていくことを期待します。

障害者も健常者と同じ仕事ができる

愛知県稲沢市で精密部品の組み立て加工を営んでいるTIYは、創業から約50年。前身の会社を父から受け継ぎ、2代目として小出晶子氏が経営しています。

以前、小出氏は歯科衛生士として活躍していましたが、出産を機に職を降ります。その後、父の会社でパートとして働くようになります。事業承継後、2006年に会社拡大を行い、2008年に現在のTIYを設立しました。

たくさんの障害者雇用を行っている小出氏の原動力は、「どうしたら働けるのか」という「人を生かす」ことからくるものでした。

かつては人が足りていなかったため、猫の手を借りる思いで障害者を雇用していました。しかし、共に働いていく上で健常者と障害者の成果が同じことを知り、小出氏は健常者との能力の違いがないと感じたといいます。仕事に合った人を選ぶのではなく、人に合った仕事に変えていくことで、障害者であっても十分に成果を生み出すことができると実感したそうです。

働くことは生きる喜びに

同じように成果を出せるにもかかわらず賃金に差をつけるなど、障害者と健常者との間に不平等さを感じた小出氏は、障害者との壁をなくし、障害者と健常者が共に働ける環境づくりに尽力します。

たとえば、同社の取り組みとして、間違った動作や不良品が出ると機械が正しく起動しないようになっていたり、部品の足りない欠陥品を区別したりする装置を簡易的に開発しています。こうした数々の努力が実り、今では精神障害者1名、聴覚障害者2名、身体障害者1名、知的障害者13名、計17名の障害者を雇用するに至っています。

とはいえ、障害者の誰とでも雇用関係を結んでいるわけではありません。過去の経験を踏まえ、小出氏は次の4つの条件を判断基準にして、障害者雇用を行うそうです。

(1)挨拶はできるか。(2)決められた工程ができるか。(3)自分で通勤ができるか。(4)身の回りのことが自分でできるか。

小出氏が心がけていることとして、その時の気持ちに左右されないことや、常に相手の気持ちを考えて仕事をすることがありました。1つ1つの取り組みが、今を生きる人々を生かすことであり、同社の「働くことが生きる喜びにつながる」という会社理念につながっています。知恵と工夫を積み重ねることで障害の有無によらず、誰もが「働きたい」という自分自身の思いを実現できる会社づくりに日々挑戦を続けています。

また、働くことに対して、若者がうまくイメージできないことを危惧している小出氏は、地元の中学生らに職場体験の場を設けています。部品加工の仕事を知ってもらうと同時に、身近に障害者と働く環境があることを理解してもらう目的があります。

障害を持つ社員の皆さんと懇談

その人に合わせて仕事を変えていく

私たち学生から見てTIYは、共に働きたいと思う会社です。本来、仕事に合わせて人を雇用するのが一般的であると私たちは考えます。しかし、小出氏の経営方法は学生の思考をはるかに超えていました。仕事に合った人を選ぶのはスタートラインに過ぎず、その人に合った形に仕事を変えていくそのあり方はまさに、「人を生かす」という同友会の理念に沿っているもので、理想であると感じました。

また、それを踏まえた上で私たち学生は、障害者のリーダーを確立することで新しい会社の形が形成されていくのではないかと考えました。その考えに至った経緯には、小出氏の言葉がヒントにありました。「生きるということは社会とつながること、働くことで社会とつながっていくことができる」。

私たち学生は、新たな企業づくりのためのアイデアや経験をインターンシップを通して学ぶことができました。人間として生きることを保障することは、障害者や健常者によらず必要だと私たち学生は考え直すことができました。ありがとうございました。

写真で見る 2023インターンシップ

インターンシップの研修風景をPDFファイルでご覧いただけます。

2023インターンシップ 研修風景

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