メルマガ―愛知同友会の「今」に繋がる50年の足跡―

 

第6回 経営環境改善運動

 

 

 経営環境改善は企業体質強化と並んで同友会の運動の柱であり、同友会発足当時のきっかけでもあり、現在は中小企業憲章を中心に発展しています。

 

 名古屋中小企業家同友会発足の理由の一つに、1962年当時の金融引き締め政策による金融難が挙げられています。初代代表理事の遠山昌夫氏は当時を振り返って「あの頃は中小企業というだけで銀行は融資をしてくれなかった。また有効な中小企業向けの施策も皆無だった。」と語っており、当時の理不尽とも思える環境の厳しさが想像できます。

 

 名古屋同友会が創立後、最初に取り組んだ課題が金融問題であり、創立総会の2ヶ月後には初の「金融問題研究会」が開かれました。

 

 1964年には地元代議士との中小企業政策懇談会を開催し、その後も国政選挙などのたびに全政党に呼び掛けて中小企業政策の懇談を行ってきました。

 

 同じく1964年には、現行税制改正に関する要望を、対外的な声明としては初めて発表したり、1974年オイルショック時には会として「物資不足に関する要請書」を発表するなど、自分たちが姿勢を正して勉強することを基礎としながら、政策に対する要望も積極的に行ってきています。

 

 60~80年代の代表的な経営環境改善運動としては「大型間接税」の反対運動が挙げられます。

 大型間接税は最終的に「消費税」として1989年に成立しましたが、それまで「売上税」「付加価値税」「一般消費税」など様々な名称で法案が出されるたびに中小企業家による反対運動は全国的に行われ、愛知同友会でもその都度反対署名や会員企業の試算に基づく反対声明を出してきました。

 

 1992年、創立30周年を迎えた愛知同友会はこの時に掲げたビジョンの中で、同友会が経営者の団体として「情報発信の基地になる」という目標を掲げました。

これを受け、94年2月から、年4回のペースで独自の景況調査を始めました。第1回の調査結果レポートでは折りしもバブル崩壊の直後、「もうそろそろなんとかなって欲しい~好転への期待強いが、確証は?…」の見出しで始まっています。

 現在も継続している景況調査は、中小企業の生の声を反映した経営環境の情報源として、マスコミ、行政、各種研究機関に注目され続けています。

 

 90年代後半からの長期不況、97年金融危機に端を発した中小企業向け融資の「貸し渋り」「貸し剥がし」問題は中小企業経営に深刻な影響を及ぼしました。99年に整備された「金融検査マニュアル」は中小向け金融の不安定化を加速させました。

 

 こうした事態に対し、愛知同友会は全国に先駆けて「貸し渋り」「貸し剥がし」問題に対応し、99年には中小向け融資の実態解明のためのアンケート調査を行い問題点をまとめました。そしてこの問題を解決するには金融庁が金融機関の活動を評価し、それを公表する制度が必要であることを提言しました。これが全国同友会における「金融アセスメント法制定運動」のきっかけとなりました。

 

 2001年には金融アセスメント法の請願署名運動を行い、愛知では13万名以上、全国で100万名を超える署名を集めました。

 金融アセスメント法制定は現在も継続課題ですが、この全国運動を受け政府は、2002年には「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」を策定し、2003年には「リレーションシップバンキングの機能強化」を打ち出すなど、目に見える形での成果を残しています。

 

 愛知同友会は2002年に欧州中小企業政策の視察を行い、中小企業は経済の背骨であり経済戦略の中核と位置付けた「欧州小企業憲章」を学びました。

 これをきっかけに中同協は2003年に、中小企業憲章と中小企業振興基本条例の制定運動に取り組むことを掲げました。

 これを受けて愛知ではパワーポイント資料や、会員企業の「外部阻害要因レポート」の活用で、自社経営と憲章の関わりを考える「愛知方式」の学習会を提唱し「大学習運動」を展開。また支部・地区においては市の商工課や商工会議所との勉強会・懇談会が定期的に行われるようになりました。

 

 2009年の政権交代で憲章制定の機運が高まり、2010年6月18日、政府の「中小企業憲章」が閣議決定の形で制定されました。同年7月中同協総会では独自の「憲章草案」を採択し、愛知でもこの「草案」の精神を自社経営に活かすことを呼びかけ、「条例」制定運動の取り組みの基盤として取り組んでいます。

 

(2012年6月11日発行)

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